あれは確か東京オリンピックの頃だったと思う。上野稲荷町に生まれた僕は、御徒町の中学校に通っていた。ある日、友人の誘いで銀座の東劇と云う映画館に『洋画』を観に行くと云う事になった。「歩いて銀座まで行こうぜ」と誰が言ったのか分からないが、何故か歩いて行った事はよく覚えている。その映画は、僕が初めて観る『洋画』で「グレートレース」と云うタイトルだった。出演者はトニーカーチス、ジャックレモン、ナタリーウッド、ニューヨークからパリまで車で競争すると云う単純なストーリーのものだったが、アメリカギャグ満載で、僕の笑いのルーツとも言える作品だった。この『洋画』は休憩があって、前半を見終えた僕は、ジャックレモンのあまりの面白さに感動していた。生まれて初めて心の底から笑いがこみ上げて、汗と涙と震えが止まらなかった、そして役者と云う仕事に感動した。その頃の僕はと云えば、恥ずかしがり屋もいいところで、女の子に話しかけられただけで、心臓はドキドキ、汗がだらだら、顔は真っかっか、「タコちゃん」とあだ名を付けられていた。
「たこちゃん」はその後ジャックレモンを追い続けた。「アパートの鍵貸します」「酒とバラの日々」「お熱いのがお好き」etc etc etc。 その中でもニールサイモン作「おかしな二人」はウォルターマッソーとの名コンビぶりを見せてくれた秀作である。今回の「おかし『い』な二人」はその「おかしな二人」からちょっとエッセンスを頂『い』たタイトルである。
僕の敬愛する、チャールズチャップリン、ジャックレモンに捧げると云うのもおこがましい話ですが、この偉大な二人の喜劇役者のエッセンスと、本間ひとしと云う希有なスパイスをからめたシリーズ第一回「おかしいな二人」、平成26年度文化庁芸術祭参加公演、是非お誘い合わせの上ご覧下さい。赤坂CHANCEシアターへのお運びをお待ちしております。